心に残る一冊
お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。

星々の舟-村山由佳

2010/10/20

読書をほとんどしなかった私が大ファンになり今でも読み続けている作家がいます。村山由佳さんです。村山さんが2003年に直木賞を受賞した「星々の舟 Voyage Through Stars 」は私が初めて読んだ村山さんの作品です。これを読むきっかけはあるテレビ番組で爆笑問題の太田光さんが村山由佳さんをゲストに招いて話をしていたのを見てのことでした。太田さんが、この「星々の舟」を読んで涙が出るほど感動したと言っていたのを見てなぜか突然読んでみたいと思い、次の日早速本屋に行き立ち読みしました。この本は六つの物語で構成されていて、あるひとつの家族が描かれています。各章によって主人公が違い家族それぞれの視点で書かれています。第一章は次男が主人公で、育ての母が病に倒れた知らせを受け迷いながらも実家に戻ります。そこで彼が知らなかったこの家の過去のことや実の妹との禁断の関係を想起する内容になっています。この第一章を読んだだけで私はその場で涙が出そうになっていました。本屋だったのでぐっとこらえましたが家だったら間違いなく涙がこぼれていたと思います。

これ以外の話は不倫を繰り返す次女の葛藤を描いたものや、第一章の長男との愛を忘れられず苦悩する長女の視点で書かれた話があり、最終章には父親の視点で自分の戦争体験を回帰する形で戦争観や現代社会への思いが描かれています。世代や性別を超えて幅広い視点から描けるところが村山さんの作品の特徴のひとつです。

この本では日々の生活を普通に送っているように見えながら心に秘密や傷を抱える人々の姿がありありと描かれていて、登場人物がまるで実在するかのように思えます。それほどちょっとした心の動きや言動が細かく書かれているのです。そして多くの村山さんの作品に共通することですが、内容がせつないものが多いのです。でも登場人物は心温かく思いやりのある人ばかりで読んでいてほっとします。

この本に出会ってから村山由佳さんの作品は全て読んでいます。私にとっては村山さんの作品は「救い」とでもいえるほど大切です。
機会があったらあなたもぜひ村山さんの世界観にひたってみてください。

ライタープロフィール

ビッキーさん/女性/年齢:20代/千葉県在住、TOEIC 915点(リスニング満点取得)。旅行と食べ歩きが趣味のアラサー女性です。日頃はカロリー控えめのヘルシーな料理作りに励んでいます。