感動した話
思い出すとジーンとくる…感動した話を紹介します。

忘れられないたこ焼きのおいしさ

2012/04/01

何十年も前の学生時代のことです。学校の夏休みに、関西方面に旅行に出かけました。行く先を決めていない一人旅でした。関西をぶらぶらした後、手持ちのお金が残り僅かになっていることに気付きました。家に帰るまでの旅費がありません。

親や知り合いに電話をして助けを求めるという選択もありましたが、できれば、その方法はとりたくはありませんでした。プライドが許さなかったのです。それに、四国八十八箇所巡礼ではありませんが、「旅も人生の修業に一つ」という考えがあったので、人に頼らずに乗り切りたいと考えました。数日経てばアルバイトの給料が銀行口座に振り込まれるので、それまで耐えれば何とかなるという事情もありました。

まず、泊まる所を探さなければいけません。当時は、ネットカフェのようなものはありませんでした。幸いにも、夏だったので、寒さに震える心配はありません。地下鉄の入口か公園に座って、朝になるのを待とうと考えました。

問題は、食事です。ろくに食べておらず、お腹の空いた状態が続いていました。四国巡礼のお遍路さんのように、駅前で念仏を唱えて賽銭をもらうこともできません。もっとも、人間は、数日間何も食べなくても、水分さえ摂っていれば、死ぬことはありません。しかしながら、いよいよ空腹に耐えられなくなってきました。

そんなとき、ある駅のホームで、おいしそうにたこ焼きを食べている女性がいました。「おいしそうだ」と思い、見ていました。その人から見れば、恨めしそうに見ているように思えたのでしょうか。「食べてください」と言って、たこ焼きをくれました。「ありがとうございます」と心からお礼を言って食べたたこ焼きは、本当においしかったです。

人の暖かさに触れた瞬間でした。感動しました。それ以来、たこ焼きが好きになり、関西に行った際には、必ず食べるようになりました。

ライタープロフィール

ソウさん/男性/年齢:40代/徳島県在住/理系の学部を卒業後、システムエンジニア等の仕事を経て、法律系の資格にチャレンジするも合格できず。現在、ウェブ制作や輸入ビジネス関連の起業をしようと目論んでいます。飲み歩きや食べ歩き、街をブラブラしたり、隠れた名所を探索すのが大好きです。総合格闘技や沖縄空手、ヨガにも興味があります。波乱万丈の人生を送ってきたせいか、他人と違う視点で物事を見ることが多いです。