- 感動した話
- 思い出すとジーンとくる…感動した話を紹介します。
通りすがりの天使
2015/04/01
ちょうど一年半前の話です。私には、愛して止まない愛犬のマリーがいました。
マリーがお空に帰ってから、もう一年半が経ちますが、彼女は、原因不明の病と闘っていました。その病は、食事をすると呼吸困難になり、そして段々と体力が衰え、しまいには立ち上がるだけで呼吸ができなくなってしまう程に過酷なものでした。
まだマリーが元気だった頃、ある日マリーの大好きな公園へ散歩に行った時のことです。その日は、よく晴れていて澄んだ空気がとても美しい日でした。駐車場に車を止めて、約2キロ程あるお散歩コースを歩きました。とても清々しく、良い時間でした。ですが、それは起こってしまいました。最終地点に到着し、折り返そうとした次の瞬間、マリーが呼吸困難に陥ってしまったのです。突然咳き込むことは良くあったので、その症状が出たのだと思い、また直ぐに治るという気持ちで、マリーの背中をさすりました。ですが、この時ばかりは様子がおかしく、そのまま息ができなくなり数歩頑張って歩いたものの、ドスンと倒れてしまいました。
とても苦しそうな愛犬を見て、すぐにでも病院へと思い、携帯電話を取り出しましたが、なんと電波はゼロです。田舎にある穴場的な公園でしたので、他に人もいません。私はもうパニックで、「このまま死んでしまうんだ。」という、既に諦めた気持ちで一杯になりました。横たわる愛犬を一匹残し、走りまわりましたが誰もいません。車に辿り着くには2キロの道のりを再び行かなくては行けません。「もう駄目だ。」正直そう思いました。
と、その時です。なんと後ろから突然男性が現れたのです。そして、35キロある大型犬のマリーを担ぎ、歩き出したのです。もう60歳以上であろうという男性です。その頼もしく、勇敢な行動に私は感謝せずにはいられませんでした。「ありがとうございます。ありがとうございます。」と何度も言いました。そしてマリーの名前を呼び続けました。その時は、どうにか愛犬を助けたい気持ちで必死です。男性は汗塗れになり、流れる汗で視界が閉ざされているようでした。私は少しでもと思い、愛犬の脚を必死に支え、重さを軽減させようと頑張りました。
7月の暑さです。キロの道のりは、正に生死をさまよう過酷な時間でした。それは本当に長く、永遠に感じました。ようやく車に辿り着き、愛犬を車に乗せました。
「お名前だけでも教えていただけませんか?」そう尋ねる私ですが、男性は名前も名乗らずに、「無事を祈っています。」ただそう言い残し、去って行きました。
急いで病院にマリーを連れて行き、緊急で治療をしてもらい、一命は取りとめました。あの男性に出会わなければ、マリーの命は無かった事でしょう。
マリーは、その後数週間でこの世を去ってしまいましたが、たった数週間でも長く生きられたのは、あの男性のお陰です。本当に感謝しています。
アメリカの義母にその事を伝えると、「それはね、何だと思う?天使が現れたのよ。」義母の話によると、沢山の天使ちゃん達がその男性を導いてくれたんだと言います。本当に私もそう思わずにはいられません。今、この場を借りて深い感謝をあの男性に伝えたいです。
〜ありがとう〜
シャイロさん/女性/年齢:20代/カリフォルニア在住/日本・アメリカで舞踊家として活躍。伝統芸能伝承を目標に子供達のためのワークショップに努める傍ら、趣味でモデルやライター活動もしています。