- 人生最悪の瞬間
- 今まで生きてきた中で最悪だったときはどんなとき?人生最悪の瞬間を紹介します。
寝たきりホームステイ
2015/03/24
幼い頃から海外に興味があった私は、小学生の時から夏休みにはフランスやイタリアに旅行に行く程でした。中学生になると、学校の留学プログラムでホームステイがありました。ですが、このプログラムは非常に倍率が高く、誰もが参加可能という訳ではないのです。成績や生活態度から、厳しい審査で選抜された候補者は、最終的に、公平なくじ引きにより選抜されます。海外に興味があった私は勿論応募をし、見事最終選抜者として選ばれたのです。
行き先は、バンクーバー。夏休みを利用した2週間のプチ留学の始まりです。初めてのカナダに胸を膨らませて出発しました。海外に慣れていた私は、事前に有名スポットや、カナダの生活文化などを自己調査し、引率の先生も驚く程情報に長けていました。
いつも飛行機の空の旅は全く苦になりません。キャビンアテンダントに憧れていた私は、その仕事ぶりを見たりするのが、何よりの楽しみでした。ですが、今回の空の旅は何かが違う...なんと、飛行機酔いをしてしまったのです。「気持ち悪い・・・。」普段乗り物酔いなんてしたこともない私ですが、この時ばかりは、普通にしていられない程に気分が悪く、機内で何度も吐いてしまう程でした。到着する迄がとても長く永遠かのように感じました。
ようやくバンクーバーに到着し、ホームステイ先のファミリーとご対面。ステイ先に行くと、まずは夕食の時間。ママが用意した、とても豪勢な料理を目にしました。日本から来た私に気を使って、寿司まで用意してくれていました。それにも関わらず、私の身体はまだ乗り物酔いから回復せずに、申し訳ないと思い少し料理に手をつけたものの、再びすぐにダウンしてしまいました。「きっと、疲れているんだ。今日は早く寝て、明日に備えよう。」そう思い、翌朝が来るのを楽しみにその日は早めに休みました。
翌朝・・・・「よ〜し!今日こそは楽しむぞ!」そう気合いを入れ起き上がろうとすると、また急に吐き気が・・・結局その日も、ベッドで寝たきりになってしまいました。そして、その次の日も、またその次の日も。
引率の先生は、日本にいる家族に連絡を取り、病院で見てもらうように進められましたが、強がりな私は、拒否し続け、楽しみにしていた観光スポットにも行けずに、学校にも行けずに、ただただホームステイ先の家族に看病されながら、2週間が過ぎました。
ステイ先のファミリーにしてみれば、わざわざ病人を日本から預かったようなものです。私にとっては、わざわざ具合を悪くなる為に、カナダ迄行ったようなものです。その事実を感じたとき、私にとって最も屈辱で、これぞ人生最悪の瞬間でした。
日本に帰国してからは、皮肉にも一日足らずで体調が良くなりました。まあ、大抵そんなもんです。
ですが念のために病院に行くと、身体には異常もなく、なんと「ストレスだ」と言われました。これには、私も母も驚きです。中学生の私でしたが、よく考えてみれば習い事を3つ掛け持ち。その上に舞台やコンクールなどに追われ、選抜されたメンバーとしてしっかりカナダで学習してこようと意気込んでいたのが、若いながらにプレッシャーに感じ、ストレスを貯めていたようなのです。その上でカナダに行った事による急激な環境の変化で、体調を崩していたようなのです。
若い頃は、ストレスという言葉に無縁かと思いきや、そうではないのですね。大人になった今でも、その時の経験を胸にストレスとは慎重に向き合うようにしています。それにしても、残念な体験であったと、今でも後悔を感じるのでした。
シャイロさん/女性/年齢:20代/カリフォルニア在住/日本・アメリカで舞踊家として活躍。伝統芸能伝承を目標に子供達のためのワークショップに努める傍ら、趣味でモデルやライター活動もしています。