心に残る一冊
お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。

子どもにとっての親友

2010/10/11

絵本は、自分が思うよりもはるかに多くのものを私たちに与えてくれます。

私がまだ小さかった頃、私の部屋には祖父が私のために揃えた世界の物語絵本がずらりとあり、私の両親は、私が物心つく以前から、毎晩寝る前にはその絵本を含めたたくさんの絵本の読み聞かせをしてくれました。
そのせいか、20代半ばに差し掛かった今でも、私は絵本が大好き。開けばどんなときでも子どもに帰れるような、ふわっとあたたかい気持ちになれるような、忘れていた何かを思い出すことができるような…時々、日常から抜け出して絵本の世界に入りたくなってしまします。

「こんとあき」はその中の一冊。おばあちゃんの作ったキツネのぬいぐるみ「こん」と女の子「あき」がおばあちゃんの家へ行く冒険の物語です。二人は大の仲良しで、「こん」は「あきちゃん」が生まれたばかりの赤ちゃんだった小さなころからずっと見守り続け、いつも一緒に遊んできました。初めて言葉をしゃべったときも、初めて歩けるようになったときも、いつだって。そして何年かたった頃、あきはこんの体のほころびを見つけ、こんを直してもらうために、二人の住む町から遠く離れた「さきゅうまち」にいるおばあちゃんの元へ行くことに決めます。
二人分の切符を持って電車に乗り、二人でお弁当を食べ、途中様々なトラブルに遭遇しながらも、励ましあっておばあちゃんの家までたどり着きます。あきを強くしたのはこんの「だいじょうぶ、だいじょうぶ」という一言でした。

常識で考えれば、ぬいぐるみが言葉を話し、一緒にお弁当を食べることなんてありえません。不安で心細くなったときに「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言ってくれることもありません。
それでも、ぬいぐるみと一緒に遊び育ってきた私にとっては、この物語は限りなく現実に近いものに思えました。私の小さな頃からの親友も彼ら二人と同じように、嬉しいときも楽しいときもいつでも一緒、悲しいときにはいつも一緒に寝てくれました。誰にでも、きっと「あき」にとっての「こん」のような、一番の親友がいると思います。私たちには彼らの声は聞こえませんが、きっと彼らにも気持ちがあって、「だいじょうぶ」、「がんばれ」と励ましてくれているのだろうと思えて仕方がありません。
そんな気持ちにさせてくれる大切な一冊です。

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ライタープロフィール

さかさん/女性/年齢:20代/宮城県在住/修行中の新人コピーライター。写真と旅とおしゃれが大好き!愛機はキヤノンの30D。最近は肩こりがカメラの重みに耐え切れず接骨院通いの毎日です。おいしいものを食べてるときと布団でごろごろしているときが至福のとき。ビールと軟骨の唐揚げ、塩ラーメンには目がありません。素敵なカフェも開拓中☆