- 心に残る一冊
- お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。
宮部みゆきさんの本・普通の少年の冒険を描く壮大なファンタジー「ブレイブ・ストーリー」(上・中・下)
2021/02/02
宮部みゆきさんという作家の本をおすすめするにあたって、できるだけ幅広いジャンルを知ってもらいたいと強く思いました。そこであえて大人向きではなくミステリーでもない、ファンタジー小説をご紹介することにしました。子どもが読むにももちろんおすすめ、でも大人も読後の爽快感をきちんと味わえる作品です。
「ブレイブ・ストーリー」は2003年の作品。小学5年生の主人公ワタルが、自分の運命を変えるために「幻界(ヴィジョン)」と呼ばれる不思議な世界へ冒険の旅に出ます。その幻界に住む不思議な生き物たちと出会い、友情を育みながら時には敵と戦っていく。そしてワタルのライバルの同級生ミツルの存在。彼もまた幻界で、彼なりの方法で自分の運命を変えようと戦います。ワタルとミツル、それぞれの現世での運命は変えられるのか…。
この物語の中には、小学生が少なからず抱くであろういろんな感情が表現されています。子どもである自分の思い通りにならない日常、理不尽だらけの大人の事情、うまくいかない友達との日々。違う世界へ行ってしまいたいという、小さい頃に一度は抱いた思いがベースになって、つい物語へとのめり込んでしまいます。
幻界ではワタルのような現世から幻界へ来た人間を「旅人」と呼び、その旅人と出会うことは大変な幸運と位置づけられていて、ワタルにはどんどん仲間が集まってきます。その最初の仲間「キ・キーマ」は情があって優しくて、頼れるアニキといったところ。このキ・キーマはワタルの相棒となって物語を通してワタルを手助けします。さまざまなモンスターと戦いながら成長していくワタルの姿は、読み手が子どもなら自分のことのように引き込まれるでしょうし、大人なら弟や息子を応援する気持ちで読み進めてしまうと思います。
実は宮部みゆきさんは大のゲーマー。そのことがこの作品によく表れています。まるでRPGのような世界観は、壮大でファンタジックで日常を忘れてしまいます。こんな世界があるなら子どももう一度戻ってみたい!ワクワクドキドキ、童心に帰らせてくれる作品です。
ブレイブ・ストーリー (上) (角川文庫)
李内(りうち)さん/女性/年齢:30代/町田市在住/愛知県生まれ。夫と愛犬の3人暮らしのごくごく普通の主婦。仕事はサービス業。趣味は読書、料理、仕事。犬が大好きで愛犬と過ごす時間が何よりの幸せです。