心に残る一冊
お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。

ゾクゾク感を存分に味わえる貴志祐介さんの本

2021/01/29

貴志祐介さんといえばやはりホラー小説。私が読んだ中で特に怖かった!という作品ご紹介します。

○言わずもがなの代表作「黒い家」
1997年の作品。第4回日本ホラー小説大賞を受賞した作品で、映画化もされています。主人公はとある生命保険会社に勤める若槻慎二。そこで保険金支払いの査定担当として働いています。そしてある時顧客に呼び出され、その家で死体の第一発見者となってしまうところから物語は始まります。直感で顧客自身が怪しいと感じた若槻は保険金の支払いに応じず、そこから保険金の支払いを催促する顧客がじわじわと若槻を追い詰めていく…。けして荒々しい場面はなく、静かにひっそりと、でも確実に近づいて来る恐怖。この恐怖感はちょっと他の作品では味わえません。家に1人でいる時に読むと、背後に何かの気配を感じてしまうほど。これでもかという程ゾクゾクしたい人におすすめの作品です。
黒い家 (角川ホラー文庫)

○極限状態での人間の本質を描く「クリムゾンの迷宮」
1999年の作品。主人公の藤木芳彦はある日、火星を彷彿させる異様な空間で目が覚めます。そこから始まるゼロサムゲーム。生き残りが最後の1人になるまで、先の見えない殺し合いが続いていきます。このゲームの参加者は全部で9人。それぞれに与えられたアイテムを持って、ゴールに向かっていくのですが、ゴールできるのはたった1人。藤木を始めとするゲームの参加者は、助け合う者、有無を言わせず他者を殺していく者など戦い方はさまざまで、一体最後はどういう結末を迎えるのかまったく想像がつきません。それを早く知りたくて、まさに寝食忘れて読んでしまいます。またこの作品では、携帯ゲーム機がホスト役となってゲームが進んでいくのですが、この中に登場するキャラクターの奇妙な明るさが、逆に恐怖を増幅させています。極限の環境に置かれた人間がとる行動は多種多様。人間が持つ残酷さや冷酷さが、細部まで描かれている作品です。
クリムゾンの迷宮 (角川ホラー文庫)

ライタープロフィール

李内(りうち)さん/女性/年齢:30代/町田市在住/愛知県生まれ。夫と愛犬の3人暮らしのごくごく普通の主婦。仕事はサービス業。趣味は読書、料理、仕事。犬が大好きで愛犬と過ごす時間が何よりの幸せです。