- 心に残る一冊
- お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。
火よう日のごちそうはひきがえる
2021/01/07
本好きの人には、いろんなタイミングで出会うであろう「忘れられない一冊」があると思います。私にも一丁前に今までの人生において、「この本を読んだことで考えが変わった」という一冊が何冊かあります。この記事を書くにあたって、その何冊かのうちどの一冊を取り上げようか迷いました。そして何日か考え、本好きに至るきっかけとなった、言わば原点とも言える本を取り上げることにしました。
その本は、「火よう日のごちそうはひきがえる」といいます。2〜3ページに一度ほど絵が描いてある子供向けの本です。対象年齢は小学校中学年ぐらいでしょうか。児童書としてかなり有名なのでご存知の方も多いと思います。私は小学校の図書室でこの本に出会いました。図書室で出会うということは元々本好きだったんじゃないの?という疑いの声が聞こえてきそうですが、それは違います。小学校3、4年当時私は主に男の子に軽くいじめられていたので、よく人が少ない図書館へ逃げ込んでいたのです。そこで出会ったのがこの本でした。
「火よう日のごちそうはひきがえる」は、アメリカの作家ラッセル・E・エリクソンが1974年に発表しました。私が小学校に入学したのが1980年も終わりに近づいていた頃なので、この本が発表されてから約17〜18年ほど後に出会ったことになります。タイトルがとても興味深くて思わず手にとったのですが、読んでみると面白くてやめられなくなりました。
どんなお話なのか簡単に説明すると、ひきがえるの兄弟、モートンとウォートンがいろんな冒険冒険をするお話。ある冬の日に、ウォートンが美味しいお菓子をおばさんに届けようと出かけるところから始まります。そしてその道すがら、ウォートンがお腹を空かせたみみずくに捕まってしまうのですが、そのみみずくが自分の誕生日である「来週の火曜日にお前を食べる」と宣言するのです。そしてみみずくの誕生日が来るまでの間、ウォートンは何とか食べられまいと苦心し、徐々に捕食者であるみみずくと餌であるひきがえるの間に友情が生まれていく…という内容です。
私はいじめられて駆け込んだ図書館の中でこの本に出会い、以来30年近くに渡って本を読むという行為の魅力に取り憑かれています。そのことを忘れないように、大人なってから買って今も手元にあるほどなんです。この本がなかったら、もしかしたら本好きの自分はいないかもしれません。そういう意味で「火よう日のごちそうはひきがえる」は私にとって人生を変えた、と言える一冊です。
火よう日のごちそうはひきがえる (児童図書館・文学の部屋―ひきがえるとんだ大冒険シリーズ 1)
李内(りうち)さん/女性/年齢:30代/町田市在住/愛知県生まれ。夫と愛犬の3人暮らしのごくごく普通の主婦。仕事はサービス業。趣味は読書、料理、仕事。犬が大好きで愛犬と過ごす時間が何よりの幸せです。