運の良かった話
ありえない…運の良かった話を紹介します。

憧れのアーティストにお近づき

2011/05/24

私は去年、後に先にも、これほど運が良いと感じたことがない、そんな経験をした。今思い出しても夢だったのでは?と思うほど。

私は椎名林檎さんの大ファンで、10年以上ファンクラブに加入している。数年に一度、ライブツアーが行われる。私はそれを心待ちにしている。去年もその年で、私は友達と参加するため、ペアでチケットを申し込んだ。ライブの2週間ほど前、待望のチケットが届いた。ドキドキしながら封を開けると、そこには"あ列〇〇番"と書かれていた。紛れもなく最前列だ。よく"小躍り"すると耳にするが、この時、自分が小躍りしていることに気づいた。

ハラハラしながらライブ当日を迎える。家からだいぶ距離もあるので、ゆったりとJRでその都市へと向かった私達。ここで運を使い切ったね。と友達と話し、それも本望かもと笑っていた。

ライブの前に戦闘服に着替える私。この日は絶対着物を着ようと決めていた。ただの着物ではない。椎名林檎さん本人が開発に携わったお着物なのだ。色無地・帯・長じゅばんまで。高かったのを思い出す。未だローンを払ってますもの。仕事でたまに着るけれど、この日こそが一番活躍しなきゃいけないお着物。しっかり帯を締め(自分じゃないです。美容師さんに着付けてもらいました)、いざライブ参戦。

始まった途端、さっきまでざわついていた心が大人しくなった。この先1分1秒見逃さず、目に焼き付けたいという気持ちからだろう。1列目というのは魔法にかけられたような席だ。1mと離れていない距離に憧れの彼女がいる。自分だけに歌ってくれているような錯覚に陥る。

歌い始めの前半、それはいきなり訪れた。林檎さんが私目がけて手を差し出すではありませんか。一体何が起きたかわからず、黙っている私をせっつくように友達が声を出す。その時、やっと我に帰り手を出すことができた。2度も手に触れ、私はそこで昇天したかのようだった。横にいた知らない男の子達も興奮しているし、私は途端に汗が出始めるし。それはもう、夢のような話。ライブは圧倒的な迫力、無駄なものが一切ない演出で私達を引き込ませた。心から生きてて良かったと思った。林檎さんの歌に何度も救われてきた。本当に感謝だ。

これから1年、何があっても元気で生きられると思った。

そして翌日、まだまだ興奮を引きずったまま、帰路に着くべくJRへ。時間があるので、デパ地下でお土産を買おうということになり、入り口にさしかかった時、やけに派手な頭髪の小柄な男性が目に入った。その方は紛れもなく、椎名林檎さんのバンド、ドラムのハタトシキさんだ。昨日お目にかかったことを伝えたい、だけどあまり騒げば迷惑。そう思った私は、駆け寄り「東京事変の方ですよね。昨日は大変楽しませて頂きました、ありがとうございます」と頭を下げた。するとハタさん、苦笑いしながらもちょこんと頭を下げてくれた。

「林檎さんは、今何していますか?」とか、「サイン下さい」とか、本当なら言いたかった。けれど、これ以上の幸福はいけないのではないかと思った。昨日お手を触れたこと、今日メンバーに合えたこと、夢のようなことはここまで。

トトロのめいちゃんが言ってた「夢だけど夢じゃなかった」という気分で列車に乗った。

そして少々不安になった。私の人生の運、本当にここで使い切ってしまったかもと。
報告しておきますが、確かにあれから1年近く経つけど、良いことがございません。

ライタープロフィール

アールさん/女性/年齢:30代/北海道函館市在住/中学生の男の子2人をもつシングルマザーです。ホステスとして働いていますが、空いた時間は趣味のオークションで出品作業。好きなことは読書と音楽・映画鑑賞。ただ、今はちょっとその時間が取れないのが残念。食べて飲んで寝ることが今の楽しみで、それがストレス解消にも。それでも疲れが著しい時は、椎名林檎さんのCDやDVDで英気を養います。