- 死ぬかと思った話
- これはやばい…本気で死ぬかと思った話を紹介します。
いま、そこにある毒ガス・テロ攻撃の危機
2010/09/28
それは、祖父母がまだ健在だったころ――。いえ「健在」といえるのかどうか、ふたりとも認知症をわずらっておりました。そんなわけで、1日に何度もトイレ掃除、というか、あと始末をするハメに。それはたいてい、母か私の仕事でした。
実家は木造モルタル2階建ての古い家です。ある朝、階下に降りてみると、何やらシロ〜くかすんでいます。鼻にツンとくるような臭いはするし、目はチカチカするし、吐き気もするし……。まさか毒ガスのテロ攻撃――!? それならご近所も大変なことになってるのかと窓をあけると、いつもと変わらぬ、ノンキな下町の朝でした。
「こ、これはもしや……!?」と、ここで気づいて助かった。「おかあさん! おかあさん!」。急いで母を呼びました。
「トイレの掃除、何使ったの!?」
やっぱり目をチカチカさせて、手のひらをパタパタとあおぎながら、それでも母はおっとりと、「なんだかヘンな臭いがするけど、何かしら」と、奥の部屋から顔を出します。
「だから、トイレの洗剤、何使ったの!?」
「何って、あんまり汚れてたから……」
パワフルな酸性トイレ洗剤と、塩素系最強漂白剤の二段使い。まさに「まぜるな、危険!」を地で行ったというのです。
「それって、死ぬよ、死ぬんだよ!」「え、まさかぁ」。急いで、家中の窓という窓、ドアというドアを開けて、ようやくことなきを得たのでした。
「もう少しで、一家心中するとこだったんだから」という私に、母は相変わらずのんびりと、「あら、そうなのぉ?」。
洗剤メーカーの方が、どんなにでっかい字で書いたって、一部のおばさんは、「まぜるな、危険!」なんて、洗剤のロゴの類だと思って目に入らないか、「ヤバイほど、汚れがよく落ちる」といった販促キッチフレーズぐらいにしか見てません。
「まぜるな」だから、「同じ容器にまぜて入れなければいい」と思って、「トイレ洗剤で汚れを落としてから、漂白剤にひたした」んです。そもそも「酸性」「塩素系」の表示だって、「強力」「よく効きます」の意味でしかなかったんですから、母にとっては。
オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。