感動した話
思い出すとジーンとくる…感動した話を紹介します。

「こんにちは!」のひとことに、ジーンとくることもあるのです

2010/08/24

「感動しました」って、このごろ「泣きました。涙が出ました」って意味で使われてません? たとえば、映画のコマーシャル。試写会をご覧になった一般の方?が、「感動しました!」っておっしゃる、あの使い方です。「涙が出るほど感動した」んじゃないんです。たとえば、主人公がかわいそうで泣いちゃったのを、「感動」と称してますよね、近ごろは。

でも、もともとの「感動」の意味って、ちょっと違うような気がします。

それはとても寒い日でした。雨も降っていました。中部地方の、いわゆるイナカ町でした。仕事で出かけたのですが、駅から目的地までの交通機関はタクシーのみ。地図を見て、「片道3,000円ぐらいかな」と踏んでたら、その倍でした。

手持ちの資金では、帰りのタクシー代は――クレジットカードが使えず、2,000円までが精一杯。しかたなく、途中で降りました。イナカ町です。ATMも、歩行者の姿はありません。たまに通るクルマは、フルスピードのトラックばかり。私は、大きなバッグを抱えていました。

人の姿を見かけては、「駅まで、この道でいいんですよね」と聞いてみる。「駅ですか? え、歩くんですか!?」とあきれられます。

だんだん情けなくなってきました。「そもそも、クライアントが交通費を前払いしてくれれば、こんなことには」という怒りと、「いやいや、ギリギリしか持ってこなかった私が悪い」という落ち込みと――。日も暮れてきました。

そのとき、傘を差して、長靴をはいた小学4年生ぐらいのオトコの子が、「こんにちは!」と笑顔で通りすぎていきました。そういうシツケをしている町なのでしょう。とっさに、「こんにちは!」と返せなかった自分が、これもまた情けなくって……。

今までで、いちばん「感動した」あいさつだったのに。なんだか「ひとりじゃないんだ」って、勇気をもらった気がしたのに。

他人の何げない笑顔と気づかいが身にしみた――初めての、今のところ最大の経験です。

ライタープロフィール

オオタクーミンさん/女性/東京在住、もしかして「鉄子」と「歴女」のさきがけだったのかも知れない、ぎりぎりアラフォー世代のライターです。小さいころから、愛読書の1つが時刻表で、プライベートの国内旅行には、たとえ北海道を旅するのにも、飛行機を使うなんてことは、はじめから考えない、まったく日航を応援してない日本人です。