- 私の生きるとは
- 生きるとは?…生きることについて、みんなの思いを紹介します。
宇宙の中の自分と、自分に中にある宇宙
2012/09/09
自分の外の世界に広がる宇宙は、いかに広く、いかに自分がちっぽけな存在か。自分というちっぽけな存在の中に、いかに広大な宇宙が広がっているか。生きるとは何か、死ぬとは何か。その答えを探っていく仏教の宇宙観には、こういった哲学がある。
東京に住んでいると、常に成長することを求められる。今の自分の現状に決して満足してはいけない。より良い仕事をし、より良い生活をし、より良いパートナーや人間関係を築き、身なりを美しく整えるのが、良い人生を送ること、そんな価値観の中に、私たちは生きている。
でも、真剣に自分に照らしあわせてみると、しょせんは自分なんてちっぽけな存在でしかなく、苦しくなったりする。なかなか、人から尊敬される立派な人間なんかにはなれないし、飛び抜けた能力があるわけでも、とびきりの美人というわけでもないし、「理想の生活」からはほど遠い場所に、自分はいる。本当に自分に生きる価値があるのか、と問いかける人も都会には多いのではないでしょうか。
漠然とした行き詰まり感のようなものを抱えていた時、私は東京を抜け出して、とあるアジアの田舎町に行った。そこでは、何もなかった。ただ、町があり、川があり、自然があった。ただただ、人も、牛も、鳥も、象も、みんな一本の道を歩いていた。朝が来れば起きて、夜が来ると眠った。あとの時間は、何をするわけでもない、ただの時間でしかなかった。村の人々は、村の夜空と星と、町に飛び交う蛍を見ながら、「This is my Life」と、ひとこと言って笑った。「成長する自分」ではなく、いますぐそこにある世界の全てを、大事にしていた。
それは、東京にはない発想だった。しかも、なぜだろう。彼らの方が、ずっとずっと、哲学的な、澄んだ目をしていた。ここがもし東京だったら、彼らはお金もなく、向上心もなく、能力もなく、みじめな存在に見えるかもしれない。でも、いま自分に秘めているものをそのままに、かけがいのないものと感じとっているの大事さを、彼らは知っていた。
広大な世界のちっぽけな自分を知ることだけではなく、自分の中に秘められた宇宙を知ること。それが、よりよく生きる秘訣なんじゃないかと、今は思う。
中花香さん/女性/年齢:20代/鎌倉出身/会社員/海外旅行、バイオリン演奏、ライブなどが趣味。好きなものは映像、絵本、仏像などです。