人生最高の瞬間
今まで生きてきた中で最高だったときはどんなとき?人生最高の瞬間を紹介します。

10mの笑顔が校庭に現れた瞬間

2012/09/04

「青春」という言葉からはほど遠い私ですが、そんな私でも、これって最高の青春!と思える思い出があります。それは、高校の体育祭。私たちの学校では、文化祭を差し置いて、一年で一番盛り上がる行事で、全校生徒が全身全霊で打ち込みます。様々な担当セクションがあるのですが、私の担当は、ペイント。体育祭当日に校庭に飾る、一辺10mくらいの、巨大なペイントパネルを作るパートです。

昔から絵を描くのが好きだった私は、原案から考えました。題材にしたのは、クラスの女子友達。すごく美人だったりアイドル的な存在だったりする訳ではないけれど、とっても素直な笑顔をする子で、この子の笑った顔を描けば、みんなきっと元気が出る!と思ったのでした。さっそく彼女を校庭の裏に呼んで、写真を撮って絵に起こし始めます。仕上がってくると、バッチリ、とってもいい笑顔。

下準備を含めると、1ヶ月以上前からはじまるプロジェクト。いざパネルを描き始めると、みんなペンキまみれになって毎晩遅くまで作業をします。夏の終わり、汗とペンキの匂いが校内に立ちこめる。暑くてめげそうにもなったけれど、友だちの笑顔が、大きな絵という形になっていくのが不思議な感覚で、とにかくがむしゃらに描き続けていました。

さて、体育祭当日。校庭のバックに、大きなパネルが、組みあがりました。建物3階建て分くらいにはなるのかな、友達が、見るも圧巻な一枚の絵になって、笑いながら、競技を見守っています。

体育祭では、競技はもちろん、創作ダンスやその衣装、大道具、パネルの絵など、全てを採点して順位を決めるのですが、私たちのクラスはというと、、結局、ビリ。あーあーと、みんな泣き崩れていく。みんな、校庭でグッタリとしています。私は、モデルの友だちと一緒に、校庭に座って、パネルの絵が解体されるのを、じっと眺めていました。長い間時間をかけてきたものが崩れていくって、それだけでもなんだか泣けてくるんですよね。

その時、友だちがぽつりと言いました。「なかなかうまくいかなくて辛い時もあったけど、でも、最後まで元気で笑っていられたのは、絵の中で笑ってる私がいたからだよ」・・その後は2人でずっと泣いてました。

今はもう、そんな熱いこと、できなくなっちゃったけれど、本当に、青春って、人生最高のときだなって、心から思いました。

ライタープロフィール

中花香さん/女性/年齢:20代/鎌倉出身/会社員/海外旅行、バイオリン演奏、ライブなどが趣味。好きなものは映像、絵本、仏像などです。