感動した話
思い出すとジーンとくる…感動した話を紹介します。

深夜の大クラッシュを救ってくれた一台の車

2018/04/11

まだ大学生だった頃、お付き合いしていた人に会いに行くため、自転車で深夜に1時間半かけて隣町まで出発した私。真っ暗な中で電灯の無い田舎道を通って、愛する人の元に行こうと頑張っていました。その日は夏にしては涼しい日で、霧が立ち込める状況。視界が悪くなりながらも、おぼろげに覚えていた道をたどって隣町へと向かって行きました。

ところが、視界がほとんど無い状態なのに全速力で自転車をこいでいた私は、足元の大きな石ころに気づくことなく、衝撃的な転倒を味わってしまったのです。自転車はぐちゃぐちゃで、元の半分の大きさに潰れてしまうほど。私は頭部への打撃を防ぐため、頭を抱えながら地面に叩きつけられました。見るからに骨折している手を眺めつつ、額に流れる暖かいものを感じたのは今でも鮮明に覚えています。あまりにもダイナミックに転んだ私は、前がほとんど見えない田舎道で、一人取り残されてしまいました。スマホも転んだ衝撃で大破。ここまで悪いことが重なるものかと思ったのでした。

隣町までの道を歩いていても、車はほとんど通りません。しかも、自転車を抱え流血しながらの歩行は、幼稚園児が歩くほどのスピードしか出ません。どう考えても徒歩では数時間かかりそうな予感に青ざめつつ歩いていると、一台のワンボックスカーが遠くから走ってきました。「これを逃すと自分の命も危ないかもしれない・・・」と思いつつ、全力でヒッチハイクを実行。ドライバーの方も必死のアピールに気づいてくれて、車を止めて降りてきてくれました。

小さな子どもとご実家から帰ってくる途中だった方は、私を見るなりタオルを貸してくれて、すぐに車に乗せてくれました。見るからに不審者のような私を乗せてくれた恩は、今も忘れることはありません。だって、服はボロボロですし、流血までしているのですから。

目的地まで乗せてくださっただけでなく、お金を持っていなかった私に1万円を渡して下さり、「すぐに明日病院を受診してくださいね」と声をかけてくれました。自分は何もしてあげられることが無いのに、そんなことは気にせずに困っている人を助けようという心意気は、本当に「ありがたい」という一言に尽きます。もちろん、当時付き合っていた方の家に着いてからは、お風呂場で綺麗に洗われつつ、キツイお叱りを受けたことは言うまでもありません。

ライタープロフィール

けぼんさん/男性/年齢:40代/北海道在住/関東の大学を卒業し、言語聴覚士として地域のリハビリに貢献。一度関東へ戻るも、地元の北海道が恋しくなり再度移住。地元愛が強いからか、北海道各地の食のスポットにも精通。旅行と日本酒が大好きな40代。