感動した話
思い出すとジーンとくる…感動した話を紹介します。

うつくしい子ども

2010/07/22

ドラマかもされた「池袋ウエストゲートパーク」の原作者や、直木賞を取った「4TEEN フォーティーン」の作者である石田良衣さんが1997年に起きた神戸連続児童殺人事件をきっかけに書き下ろした作品「うつくしい子ども (文春文庫) 」。

神戸連続児童殺人事件とは、数名の小学生が殺傷された事件で、思いつき的な犯行や不可解な遺体の損傷があったり、新聞社に挑戦状が送られてきたりと特異な事件でした。何よりも、社会に衝撃をあたえ、マスコミの報道を過熱化させた原因が犯人が当時14歳の中学生であったことでした。

この、「うつくしい子ども」は大都会ではない自然がまだ多く残る町に、父親・母親・長男・次男・妹のどこにでもいるような家族が住んでいました。ある日その町に事件がおきた。9歳の女の子が不可解な傷が多く残る状態で死体となって発見されたのです。死体のそばには「これが最後ではない」の文字。新聞記者などのマスコミが町に溢れる中、14歳の一家の次男が犯人として逮捕されました。その日から、家族の日常は一変した。押し寄せるマスコミ、鳴り止まない中傷の電話、ネット上には犯人の次男の素顔がハッキリと載せられ、家庭が崩壊するのに時間はかからなかったのです。

そんな中、長男のミキオだけは「弟はなぜ殺したんだろう?」と弟を丸ごと受け止めようと決意しました。そんな彼の姿に共感するものも表れるが、多くの人はそんな彼の姿にも、あの一家はやっぱりおかしいと言い続けたのです。いくら、周りから苛められても、中傷されても、後ろ指を差されても、「弟にも誰かがそばにいてやらなきゃいけない。誰かがわかってやる人がいなくちゃって思って。殺人犯を相手にそんなことを考えるのはおかしいだろうか。だけどあいつはぼくの弟なんです。」と、話す場面があります。弟の存在、自分の存在、周りの存在、すべてを認めようと足掻く姿が心を締め付けられるような気持ちにさせられるのでした。

この作品の全体で本当に人を殺してしまった次男と家族に対する、社会から送られる言葉の暴力が人間誰しも持っている残忍性を露にし、自分もこの無意識の刃物が行き交うこの世の中の一部であることに恐怖すら覚えさせられました。こんな状態になったなら、自分はこの少年のように信じ続けることが出来るだろうか。自分の決めた道を進み、真実までたどり着けるだろうか。と、最初から最後まで人間の弱さと強さに感動させられ、あまりの切なさに感銘を覚えました。子どものうつくしさとは何なのだろう。大人にはない素直さ、純粋さなのかもしれない。だけれど、その裏にある弱さや儚さに大人はもっと歩み寄らないといけないのかもしれない。

ライタープロフィール

ヒットさん/女性/年齢:20代/東京都在住、ウインタースポーツ・モータースポーツが好きな20代女子です。粉物の食べ物や、スイーツが好きで良く食べに行きます。お酒にも目がないのでいろんな銘柄・種類に挑戦中です。