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赤っ恥をかいた結婚スピーチ

2012/03/27
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私の友人に、学校を卒業して、就職するとほとんど同時に結婚した者がおります。学生時代から交際していた彼の新妻は、彼より2つほど年上でした。その彼と私とは学生時代を通して、ともに過ごした時間も多く、そのため彼の妻となった女性とは面識もあり、それやこれやで、結婚式での友人代表のスピーチを、夫婦となる二人から頼まれてしまったのでした。式それ自体は、そんなに派手にやるつもりはないとは言うものの、それでも60人ぐらいの出席となるとのこと。となると、私はその人数の前でのスピーチとなるわけですから、当時の私としては一大事でした。

新郎新婦のご両親やご兄弟、そして、知人友人らの前で彼らに恥をかかせるわけにもいかず、その手の書籍なども買い込み、悩みに悩んで、ようやく書いた原稿が3枚半。内容は、なるべく若ぞうである私が偉そうなことも口に出来ないため、もっぱら彼とのつき合いや、新婦となる方の美しさや、だから羨ましかったこと、私も彼女のような嫁さんを頑張って見つけようなどと、ダラダラと書き綴ったものでした。式の前の晩は家で何度も声を出して読み返し、ここで笑いを取ろうとか、ここで区切って間をとろうとか、あれやこれやと自分なりに工夫し、努力の上にさらに努力を積み重ねて、式の当日に備えたのでした。

ところが、当日、決して原稿を家に置き忘れてきたわけではないのにもかかわらず、いざ一段だけ高くなった演壇に上がり、マイクの前に立った時、私はその原稿がないことに気づいたのです。一張羅の紺のスーツの内ポケットに忍ばせていたにもかかわらず、その原稿がない。ハタと思いついたのは、こうした場所に出席し、ましてやスピーチなどの大役を仰せつかったことで緊張しまくり、トイレの大きい方で原稿を読む練習をしていたのですが、どうやらそこに置き忘れてしまったようなのです。原稿がないと気づいたときは、すでにマイクの前に立っていた私。

一瞬にして目の前が真っ暗となり、額からは大粒の汗が流れ落ち、心臓のドクンドクンと脈打つ音が確かに耳に聞こえるのでした。仕方ないと思った私は、「え〜、私は、友人の○○です」と、最初に口を開いたまでは分かっておりますが、その途中のことは頭になく、最後に、「××君、△△さん、ほんとにおめでとう」と、最後にお祝いの言葉で締めくくったことぐらいしか覚えていないのです。ともかく、焦りまくり、つかえたりどもったりしながらのスピーチで、友人に恥をかかせたのではと心配で仕方ありませんでした。それでも、それなりの拍手もあり、式が終わって新郎である友人から、「ありがとう」と、言われながら握手を求められた時は、ホッと胸をなで下ろしておりました。

ライタープロフィール

ガクドウさん/男性/年齢:50代/横浜市在住、サラリーマン時代から、文章を書く仕事に携わっていた関係から、現在はライターを職とするようになりました。人からちょっと変っていると言われますが、その分、ちょっと違った角度から物を書くことが出来ると思っております。よろしくお願いします。/ブログ