死ぬかと思った話
これはやばい…本気で死ぬかと思った話を紹介します。

喉にへばりつくキャンディ

2019/02/21

あれは忘れもしない、ある暑い日の午後渋谷駅でのことでした。その日のランチは韓国料理の店に行っていて、店員さんからサービスだからと言ってキャンディを数個もらっていたのです。

毎日使っているエアコンのせいか何となく喉に違和感を覚えていた私はそのキャンディの存在を思い出し、駅ホームで電車待ちをしているとき、口の中に放り込みました。その瞬間に背中にドンと大きな荷物が当たり、キャンディをゴクンと飲み込んでしまったのです。

とりあえず息ができないわけではなかったものの、喉にベットリと異物がへばりついている感覚。いつも呼吸をして入ってくる空気が10とすると、そのときは3しか入ってこない感じがして、明らかに息苦しく気持ちが悪い。とにかく一秒でも早く水で流し込みたいとホームに設置されている自動販売機へ急ぎました。

そして自動販売機の前に立とうとしたとき、お母さんとその子ども(3歳くらい)がスッと入ってきたのです。相手は横入りをしたというよりも、私の存在に気づいていない感じでした。そしてその親子は楽しそうに何を飲もうか?ジュースにする?などと会話をしながらじっくり選びだしたのです。

何とか声を振り絞って先に買わせてくださいと言おうとしたところ、何とそのお母さんは既にお金を入れていました。他に自動販売機がないか見回したのですが、向かいのホームにしか見えません。それに苦しくて動く気力もなく、とにかくこのまま待つしかないと真夏にも関わらず冷たい汗をかいていました。

このまま倒れたり死んだりしたら、「JR渋谷駅・成人女性がキャンディ詰まらせ意識不明」のような記事になってネット配信されるんだろうなと妙なことまで浮かんでくる始末。追い詰められていました。

そして親子がやっと購入した後、すぐにお茶を手に入れてガブ飲み。親子を待っていた時間は1分ちょっとくらいだったと思うのですが、私にとってはまるで永遠のように感じられたのを覚えています。

お茶を飲むとキャンディはすとんと落ちていきました。渋谷の空気があんなに美味しく感じたのは、私の人生において最初で最後になるでしょうね。

ライタープロフィール

えのきさん/女性/年齢:30代/東京都在住/限りなくブラックに近いグレーな会社で激務を5年間経験。その後、自由を求めてフリーランスとして独立。現在は元気すぎる娘に手を焼く日々。趣味は一人旅と野球観戦とアニメと漫画。