感動した話
思い出すとジーンとくる…感動した話を紹介します。

感動した話:持病のある友だちの出産と命名

2019/01/29

私はどちらかというと無感動な方だと思います。ドラマや映画を観て胸がアツくなった経験もあまりなく、むしろ「こんな結末になるなんて裏切られた気分だなぁ」といった、ストーリーのおもしろさに気持ちが向いてしまうタイプ。そんな私でも涙が出るほど感動した経験があります。

それは友だちの出産。仮にAちゃんとします。高校に入学してすぐに親しくなった友だちの中学時代からの友人で、Aちゃん自身は別のクラスだったものの、放課後には3人で行動することも多かったです。

Aちゃんは持病があったために激しい運動はできず、私のクラスとAちゃんクラスの合同で行われる体育の時間は、日陰のある階段でポツンと座ってこちらを眺めていました。そして体育の時間が終わると近づいてきて、「いい動きしてたじゃん(笑)」のように、まるでコーチかマネージャーのような口ぶりでニヤニヤ顔で絡んできるのです。そんなユーモアのあるAちゃんのことが大好きでした。

そして高校を卒業し、Aちゃんは地元で働き始めました。私は上京しためになかなか会う機会もなく、連絡もほとんど取らなくっていました。卒業してから3年経ったある日、Aちゃんから「今妊娠していて入院中なんだ」と連絡が来たのです。持病を抱えるAちゃんはハイリスク妊婦として早くから入院をすすめられていたようです。

Aちゃんは入籍前の妊娠……いわゆる「できちゃった結婚」。身体のこともあるため、両親からは現在の旦那さんと一緒に激しく責められ、反対されたそうです。それでも生みたい!とAちゃんは強い意志で話し合いをし、ついに両親が折れたとの話でした。

連絡を受けた次の休み、私はAちゃんに会いに行きました。すると体育が終わったあとに見せていたニヤニヤ顔でベッドの上から私を手招きして、私はホッとしたのを覚えています。

そして世間話が終わって帰ろうとしたときにAちゃんがそっと囁いてきたのです。「私、○○(私の名前)って子どもにつけたいんだよね。ずっと○○みたいになりたいって思ってたからさ」と。

そしてAちゃんは無事に出産し、今は一児の母。そしてその子の名前は私と一緒。このエピソードを思い出す度、私はAちゃんとその子に恥ずかしくないように……と襟を正すのです。

ライタープロフィール

えのきさん/女性/年齢:30代/東京都在住/限りなくブラックに近いグレーな会社で激務を5年間経験。その後、自由を求めてフリーランスとして独立。現在は元気すぎる娘に手を焼く日々。趣味は一人旅と野球観戦とアニメと漫画。