運の良かった話
ありえない…運の良かった話を紹介します。

初めて飛行機を降りたくないと思った、極上のビジネスクラス体験

2014/02/10

6年前、当時付き合っていた人がイギリスの大学院に留学していたときのこと。職場で休みをもらってイギリスを訪れました。10日間ほど一緒に過ごし、帰国日にチューブ(ロンドンの地下鉄)に乗ってヒースロー空港に向かいました。よくあることらしいのですが、その日チューブは悪天候と混雑のためかなり遅れていて、空港に着いた時点で出航時間まであと1時間ほどしかありませんでした。

焦りながら利用航空会社だったJALのチェックインカウンターに行くと、「本日はエコノミーが満席のため、SEASONSでのご案内になります」とカウンターのお姉さん。SEASONSの意味が分からずきょとんとしていると、「エグゼクティブクラスです」と続けて説明が。どうやらエコノミークラスがオーバーブッキングだったため、遅くチェックインした人をビジネスクラスに回していたようなのです。

普段格安航空券しか買わないわたしにとっては、ビジネスクラスなんて未知の世界。まあ、オーバーブッキングの人を回すくらいだから、どうせ大したことないんだろうなー、くらいに思っていました。実際ビジネスクラスと言っても、キャビン前方にちょっとだけある大きめの席、という印象しかなかったですし。

別世界だったビジネスクラス
ところがです。優先搭乗で乗り込んだビジネスクラスは、座席ひとつひとつが巨大かつ独立した、超ゆったりした空間。座席は180℃完璧にフラットになるタイプでした。ロンドン−東京は人気路線なので、大型機だった関係もあると思います。

離陸前に、ビジネスクラス専属のアテンダントさんがひとりひとりに自己紹介と挨拶。もちろんわたしのところにも来てくれたのですが、なにせオーバーブッキング組なので、申し訳ないやら場違いで恥ずかしいやら。かなり挙動不審だったと思います。

離陸するとすかさず、アテンダントさんが何種類ものスパークリングワイン、赤白ワインを入れたカゴを持って席を回ってくれます。さらに夕食はケース入りの味気ないものではなく、ちゃんとしたお皿に盛られたフルコース。和食を選びましたが、前菜のお刺身の新鮮さに感動。ロンドン発の便なのに、どうやってあんなに新鮮なお刺身を用意したんだろう、と今でも不思議です。

その後も念入りなサービスは続き、定期的にアテンダントさんが御用伺いに来てくれたり、軽食メニューとしてカレー、うどん、サンドイッチなどのオファーがあったりと、まさに至れりつくせり。座席もフラットになるのでしっかり眠れて、関西空港までの12時間のフライトがあっという間でした。着陸したときは本気で「もっと乗っていたい……!」と残念がってしまいました。

その後も何回も飛行機に乗りましたが、アップグレード体験は後にも先にもこのときだけです。一生分の運を使っちゃったんじゃないかと思うほど、ステキなビジネスクラス体験でした。

ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。