インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

したたかすぎる両替商たち

2015/08/21

ATMも増えてきたとは言え、電力事情の悪いインドではキャッシュカードがうまく働かないことも多いので、日本からある程度現金を持っていくのが安心です。そうなると必要になってくるのが両替。

ただ、あからさますぎて、呆れを通り越して笑えるインチキ両替商に当たったことがあります。2007年に初めてバラナシに滞在したときのこと、両替の必要があったので、他に比べていいレートの看板を出していた両替商に入りました。顔色の悪い痩せたおじさんが、わたしの差し出した1万円札を、レートに基づいて計算機でルピー換算します。

でもインドでは相手の計算を信じてはいけません。念のため、と言って自分で計算すると、やっぱり額を誤魔化されています。

「おじさん、これ額間違ってるよ」と指摘すると、おじさんはばれたか、みたいな気まずい顔をしてから、机の引き出しからお金を出しはじめました。数えたルピー札を渡されたので、わたしも自分で数えようとすると、「俺が信用できないのか」と言い出します。できないよ、すでに騙そうとしたやん、とは言わずに、「うっかり間違ってることもあるだろうから、念のため」と言って数え始めました。

するとおじさんは「日本のどこから来た、兄弟は何人、仕事は何だ、結婚してるのか」といったいわゆるインド人クエスチョンを始めました。お札を数えるわたしの気を散らそうとしているのがバレバレです。うーん、ああ〜、などの生返事をしながらしっかり数えると、やっぱり100ルピー誤魔化されていました。

「足りないんだけど」と今度はちょっと強い口調で言うと、「でももう手持ちのお金がないんだよ、勘弁してよ」と言い出します。さらに「日本人だろ、100ルピーなんてはした金じゃないか」と開き直り始めました。そこまで来るともうインド人の滑稽なまでのしたたかさに、笑いそうになってしまいました。

ちなみに、わたしが両替後のルピー札を数え出したとたん、思い出したようにルピー札を何枚か追加してきた両替商もありました。ぼんやりしている観光客であれば、絞れるだけ絞ろうというこのたくましさ。自衛あるのみです。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。