インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

乗車率500%の列車に乗る

2015/07/08

インドは人口12億人の国。何をするにも、どこへ行くにも、押し寄せるインド人たちをかき分けながら進む必要があります。当然列車もいつも混雑していて、観光地へ向かう人気路線の寝台列車などは、かなり前もってチケットを取らないといけないほど。

ムンバイからアウランガーバードへ向かう列車もそのひとつでした。アウランガーバードにはエローラ・アジャンタ石窟寺院という2つの世界遺産があるため、人の往来が多い路線。乗車時間は8時間ほどなので、寝台ではないのですが、列車は座席指定です。

この路線の1等席を取りたかったのですが、すべて予約済みとのこと。それならとりあえず誰かが来るまで1等席に座っておいて、席が埋まったら移動しようと、「チェア・カー」というエアコンなしの座席を予約しました。

発車して2時間ほどは、思惑通り1等席に座っていられました。でも途中車掌の検札があり、1等チケットを持っていないことがばれて、本当に首ねっこをつかまれて1等車を追い出されました。仕方ないとチェアカーに移動。熱風が窓から吹き込んではきますが、結構椅子も大きくて、ゆったり座れる。まあ問題ないじゃないか……と思ったわたしは甘ちゃんでした。

席番号はあるにはあるのですが、それはあくまで「席に座れる人」の数というだけで、車両自体に乗車制限はありません。つまりもう無法地帯的に人を乗せ放題。止まる駅という駅で、えぐいくらいに人が押し寄せてきました。座席の背もたれに座る人、網棚に上る人、ついには座るわたしの足下にも子供が入り込んできて身動きとれない状態に。おそらく乗車率500%くらいだったと思います。

赤ん坊は泣き叫ぶわ、どこかでは喧嘩が持ち上がって怒声が響く、通路にもびっしり人が座り込んで8時間トイレにも行けませんでした。やっと目的地について立ち上がったら、黒い綿パンのお尻がびしょびしょ。隣のおばさんに、トイレに行けないからって漏らしたのかしらこの子……みたいな嫌な目で見られましたが、違う、汗だ! と叫びたかったです。

人口12億人と言われてもぴんと来ないかもしれませんが、インドの人の多さを身をもって体験した出来事でした。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。