インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

インドであなたもスター気分

2015/07/02

観光地で「写真撮ってくれませんか」と言われたら、もちろんカメラを受け取って、頼んできた相手の写真を撮ろうとするのが普通ですよね。初めてインドに旅行したとき、エローラ石窟寺院でかわいい子供にそう頼まれ、もちろん、とカメラを受け取ろうとしました。

でもその子は、「あなたに写真を撮ってほしいんじゃなくて、あなたと写真を撮りたいんです」と言うのです。意味が分からずにいると、その子の家族がわらわらと寄ってきて、わたしを囲んでポーズをとりました。そして家族のお父さんがカメラを構え、まだ困惑顔のわたしと家族をパチリ。

その後も「一緒に写真を撮って」というお願いが続きました。だんだん分かってきたことには、アジア人が珍しい地域では、珍しい動物やスター扱いで記念写真を撮りたい人が多いようなのです。インドで友人になった欧米人たちも、そんなに頻繁ではないけれど頼まれると言っていました。

はじめのうちは調子に乗って、頼まれれば誰とでも写真を撮っていましたが、あるとき「あとで『外国人の彼女だ』と嘘をついてみせびらかすインド人男子が多い」と聞き、それ以降は家族連れや大人数グループとの写真に限定しました。えり好みするなんて、ほんとに気分はスター。

写真に留まらず、外国人だというだけでボリウッド映画に出演してしまった友達もいます。チェコ人とドイツ人の友人ふたりがある日、南インドのマイソール市内を歩いていると、撮影関係者に「外国人エキストラが必要だから、今から2日間撮影に参加してくれないか」とスカウトされました。ふたりは特に断る理由もないからと、外国人のバンドウーマン役で映画出演を果たしました。宿泊所も食事も用意され、小額だけど出演料も出て、とてもいい体験だったと笑っていました。

外国に行くと周りとは違うというだけで、自分がちょっとだけ特別になったような気になるものですが、インドではその感覚が何倍にも膨れ上がると言えそうです。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。