インドってどんな所?
インドに長期滞在したそまちひろさんが、現地の様子を紹介します。

聖なる死の町バラナシで、インドにどっぷり染まる

2015/01/14

聖なる死の町バラナシ

聖なる死の町バラナシ

インド人のガンジス川に対する信仰心には、びっくりさせられるものがあります。ガンジスで沐浴するだけですべての罪は洗い流され、遺灰をこの川にまけば輪廻から解脱できるというオールマイティぶりです。

ガンジス川沿いの聖地は源流の北部インドから、最下流の東インド・コルカタまで各地にあるのですが、最もメジャーな聖地が、ガンジス川の川幅が最も広くなる流域の町、バラナシ。この聖なる町には、ここで遺体を焼いてもらうために死を待つ人、聖地巡礼のインド人、ゲストハウスやレストランを営む地元の人々、バックパッカーが集い、混沌とした雰囲気を醸し出しています。

この町の魅力を誰かに伝えるのはとても難しいです。というのも、狭い路地は牛と牛糞だらけだし、何かを売りつけようとするインド人はどの町にも増してしつこいし、衛生状態が悪いせいで病気になる人が続出、おまけに聖なる町ということで、基本お酒は飲めません。たまの休みに気軽なバカンスを過ごしたいという人にはまるでオススメできない町なのです。

それなのに、わたしは3回もこの町に滞在していまいました。それはやはり、ガンジス川の持つ引力のようなもののせいだと思います。雨季にはもともと広い川幅が更に広くなり、向こう岸が見えない海のようになるガンジス。朝焼けで真っ赤に染まったと思えば、満月の夜に、月光を映して明るく輝くガンジス。季節、また1日の中でもくるくる表情を変えるガンジスは、いつまで見ていても見飽きることがありません。

月光を映して明るく輝くガンジス

月光を映して明るく輝くガンジス

また、川に沿って何キロも続くガート(階段状の沐浴場)を歩いていると、ガンジスを中心に回っているインド人の生活が垣間見えて、面白さ倍増です。町からの下水、遺灰(たまに燃えきっていない身体の一部……)が流れ放題なのに、お風呂代わりにじゃぶじゃぶしている人、歯まで磨いている人。誰も食べたくないであろう魚を獲っている人。サドゥーと呼ばれる、オレンジ色の布をまとった行者が、川に向かって一心に何か呟いている様子。何を見ても驚くことばかり。

この町の魅力を敢えてひとことで言うなら、「何を見ても見たことがないものばかりで、びっくりできること」なのだと思います。それはインド全体に言えることですが、その中でもバラナシはインドのエッセンスが凝縮された、「特濃のインド」なのです。

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ライタープロフィール

そま ちひろさん/女性/年齢:30代/中南米(2013年現在)/フリーライターおよび翻訳業。お気に入りの国はインド、住んでみたい国はスペイン、そして現在は南米を縦横断中、という矛盾だらけの人生を満喫しています。著作に「ヘラクレイトスの水」(大宰治賞2009収録)。