心に残る一冊
お気に入りの世界観、人生を変えた一冊、何度も読み返してしまう本を紹介します。

星新一の宇宙に遊ぶ

2012/06/28

星新一といえばショートショートというジャンルを創設した作家として知られています。すでに鬼籍に入られていますが、虎は死して皮残すが如く、星先生は死してたくさんの作品を残されました。

思わず先生と呼びましたが、私は弟子でも生徒でもないのですが、星新一は私にとって先生なのです。星新一の作品はほぼ全部読んでいます。今でもテレビドラマ化されたりもしています。

短編よりも短い小説を、掌編小説と呼んでいた時代もありましたが、星先生の時代はショートショート。今は「超短編」とも呼ぶようです。とある本のなかで、2時間くらい講演してくださいと言われたらすぐにもできる。数分以内の講義をしてくれと言われたら数日準備がかかると話していた著名人がいたそうです。短い文章のなかに、伝えたいことを込めたいときには、それなりに苦労して文章を磨き上げないといけないようですね。

星先生の本を読んで私もショートショートを書くようになりました。地方紙や講談社の小説現代のショートショート・コーナーに投稿し、数編掲載されてきました。誰でも書けそうな短い小説ですが、書いてみるとなかなか簡単ではありませんでした。

星先生の数ある著書のなかで特に心に残った作品は「午後の恐竜」です。人は亡くなる瞬間、いままでの人生が走馬燈のように甦るといいますが、世界の終焉のときにも過去の時代が甦り、やがては終わりを迎えるというお話です。このテーマであれば、長編にもできそうです。ですが、描写も少なく物語を進めていくショートショートのよさは、読んでいる読者の想像力をかきたてるところにあるのだと思います。最低限の描写のなかで、読者ひとりひとりが思い思いの世界を描きだし、ラストのシーンも読者が思い描くのです。

その意味で、想像力の豊かな人ほど楽しめるのがショートショートなのかもしれません。長編も短編も趣味で書き続けている私ですが、ショートショートの魅力にいまだ惹かれ続けています。星先生の作品と出会うことがなければ、小説を書く喜びを味わうことができなかったように思います。

午後の恐竜 (新潮文庫)(amazon.co.jp)

ライタープロフィール

MUMUさん/男性/年齢:50代/新潟県在住/神社が好きで日本各地をまわっています。趣味でボーカロイドでの音楽作りやギターでオリジナルの歌をつくり、ときどきライブもしています。自分らしく生きることをモットーにしています。